東京高等裁判所 平成8年(う)685号 判決
被告人 大宝興業株式会社
〔抄 録〕
所論は量刑不当を主張するものであるが、これに対する判断に先立ち職権をもって調査するに、原判決は、その認定犯罪事実の第一の一及び二として、被告会社元代表取締役で原審相被告人相羽雄一郎が群馬県知事の許可を受けないで事業範囲を変更して産業廃棄物の処分の事業を行ったことを、同第二として、右相羽雄一郎が新潟県知事の許可を受けないで産業廃棄物の収集及び運搬を業として行ったうえその対象物の一部につき右無許可事業範囲変更を行ったことをそれぞれ判示するとともに、法令の適用欄の該当罰条として、判示第一の一、二(無許可事業範囲変更)及び判示第二の各行為につき廃棄物の処理及び清掃に関する法律二五条二号、一四条の二第一項、三〇条、判示第一の二の無許可処理業の各行為につき同法二五条一号、一四条一項、三〇条と記載し、また同欄の併合罪加重として、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条により判示第二の罪の刑に加重と記載していることが明らかである。
ところで、原判決の法令適用欄の該当罰条のうち「判示第一の一、二(無許可事業範囲変更)及び判示第二の各行為」とあるのは、「判示第一の一、二及び判示第二(無許可事業範囲変更)の各行為」、「判示第一の二の無許可処理業の各行為」とあるのは、「判示第二の無許可処理業の行為」の誤記と理解し得るとしても、その併合罪加重に関する記載からは、原審相被告人である前記相羽雄一郎につき併合罪として処理したことが理解できるにとどまり、併合罪加重の基準となる一罪の範囲をどのように考えたかは必ずしも明らかでなく(ちなみに、本件起訴の形式をみるに、平成七年一二月一九日付起訴状において、第一の事実として原判示第一の一の無許可事業範囲変更の事実を、第二の事実として原判示第二の無許可事業範囲変更及び無許可処理業の事実を記載し、平成八年二月二一日付追起訴状の犯罪事実として原判示第一の二の無許可事業範囲変更の事実を記載している)、法人である被告人については、罪数に関する判断を何ら示していないといわざるを得ないのである。もっとも、被告人と犯罪事実を共通にする前記相羽雄一郎に関する併合罪処理の記載から、原判決は、被告人についても併合罪の関係にあることを前提にして刑を量定したとも考えられなくもないが(もとより、両罰規定の適用に当たり同一犯罪事実につき法人と人とで罪数評価を異にすることはないと解される)、そうであるにしても、右相羽雄一郎に関する併合罪処理の記載が前述したように不明確なものであるうえ、法人に関する併合罪処理に当たって不可欠な刑法四八条の適示を欠く以上、原判決が被告人に対し正しい併合罪処理をしたと認めることは困難である。したがって、原判決には法令適用の誤りがあるといわざるを得ず、かつ、右誤りは処断刑にも関係するものであるから、それが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
よって、所論に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八〇条により、原判決中被告人に関する部分を破棄したうえ同法四〇〇条ただし書により、直ちに当裁判所において自判すべきものと認め、さらに次のとおり判決する。
原判決が認定した罪となるべき事実に法令を適用すると、被告人の原判示第一の一、二の各所為及び同第二の所為のうち無許可事業範囲変更の点は廃棄物の処理及び清掃に関する法律二五条二号、一四条の二第一項、三〇条に、同第二の所為のうち無許可処理業の点は同法二五条一号、一四条一項、三〇条に各該当するところ、右無許可事業範囲変更の罪は営業犯として一罪であり、かつ、これと右無許可処理業の罪は刑法四五条前段の併合罪であると解するのが相当であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を罰金二〇〇万円に処することとし、主文のとおり判決する。
(小林充 福崎伸一郎 多和田隆史)